高血圧シリーズ( Part3)

 前号に引き続き診察室で皆さんからよくいただく治療に関する質問について、Q&A形式でお答えいたします。

Q1.治療はまず薬?
A1.例えば健康診断などで血圧が高いと指摘されて受診された場合、基本的にいきなり薬を処方することはありません。まずは本当に高血圧と診断していいのか、たまたま健診のときに高かっただけ(=一種の「白衣高血圧」、はーとだより第5号参照)ではないかの判断が重要です。すなわち不必要な治療を避けるために、まず2から4週間家庭血圧を測っていただきます(第4号参照)。そのうえで高血圧と診断がついて初めて治療開始となります。


Q2.いよいよ薬の始まり?
A2.私は、「なるべく薬は出したくない」「クスリはリスク」「処方するときは根拠と自信のある薬を最小限に」「その代わり処方した薬はきっちり飲んでもらう(お互いの信頼関係構築のため)」という基本方針で診療しています。高血圧の場合も、まずは次にあげる生活習慣の改善が基本となります。
(1)食事療法(後述)
(2)ニコニコペースの運動:「楽に会話ができるペースで有酸素運動(ウォーキング、水泳、ランニングなど)を毎日30分以上」が目標ですが、普通はいきなりやれと言われても無理です(私もできていません・・・)。まずは週末だけでも、10分だけでもいいから始めてみる、あるいは毎日の買い物でまずは片道5分でいいから遠回りしてみましょう。
(3)肥満の改善:BMI=体重kg÷(身長m×身長m) <25を目標に
(4)禁煙
(5)適度な飲酒:ビール大1本、日本酒1合、ワイングラス2杯、ウイスキーダブル1杯、焼酎0.6合(女性はこれらの半分) *注意:どれか一つだけです。足さないように!


Q3.食事療法はどうすんの?
A3.塩分制限が大原則となります。高血圧患者さんの中にはとくに塩分に敏感な方がおられます(食塩感受性が高いといいます)。このような方は、たまたま前日にもらい物の(別にもらい物でなくてもいいのですが)塩昆布や明太子などを食べた、あるいは外食をしただけで翌朝の血圧が上昇することがあります。目標は1日6g未満ですが、これまたいきなりやれと言われても普通は無理です。しかし一方では薄味には必ず慣れてきますので粘り強く辛抱しましょう。具体的には、
(1)食事量を減らす(腹八分):塩分の総量が減る(塩八分=造語)。
   肥満改善への最短経路
(2)醤油、味噌は減塩に
(3)味噌汁は具沢山に
(4)麺類の汁は飲まない
(5)醤油、ソースの代わりにポン酢、レモンなどをかける
(6)味付けは食べる直前にする
(7)外食は要注意   
などがあります。


Q4.おくすり治療の基本は?
A4.生活習慣だけではどうしても血圧の値が目標まで下がらない場合はおくすり(=降圧薬)を開始します(目標値については第5号参照)。高血圧治療ガイドラインでは初めに投与すべき5種類の降圧薬が決められており、通常この中から患者さんに応じて適切なおくすりを選択します。1剤で目標血圧に到達しない場合はその薬剤の量を増やすよりも他の種類の薬剤を併用する方が効果的なことが多く、またこの併用もそれぞれの薬剤の特徴が生かせるように組み合わせを考えます。最近は2剤が一つになった配合剤と呼ばれる薬剤も登場し、飲みやすくなってきています。
 3剤でも下がらないときは、二次性高血圧(第5号参照)について改めて見直すことも必要になってきます。最近のおくすりは基本的に24時間効果が持続することになっており、通常は朝食後に服用しますが、早朝高血圧(第4号参照)の治療のために夕食後や寝る前に服用することもあります。
このように高血圧の治療では、実は色々なことを考えておくすりを処方していることがお分かりいただけると思います。ですから決して自分の判断で量を変えたり、中止することはせず、疑問があれば必ずご相談いただきますようお願いします。


Q5.薬は一回始めたら一生飲まなアカンの?
A5.「アンタ、血圧の薬は1回始めたら一生飲まなあかんねんから簡単に医者の言うことなんか聞いたらあかんで」と親戚のオバチャンに言われたことがある人もおられることと思います。実際は、上で述べたような生活習慣の改善により、おくすりを飲まなくてもいけるようになったり、あるいは完全にやめることはできなくても数や種類を減らすことができるようになる人はたくさんおられます。また、一般に夏場は血圧が下がるために、その間はなるべく減らしたり休むことができないかをいつも考えています。逆に言えば、塩分も減らし、体重も減らし、運動も頑張っているのに、夏も冬も何年もくすりの見直しがないことの方がおかしいといえるかもしれません。